ジッケンノート

社会人を目前に初めてジャニーズに落ちた人間がどのような経過を辿るのか記録する

多ジャンル掛け持ちオタクの新しい生活様式とエンタメの楽しみ方 その1 ~4か月ぶりの観劇再開と当日の中止決定編~

緊急事態宣言が解除されて2か月あまり。
7月は4か月ぶりに観劇に行くことができた。

でも、8月になった今、これから観劇という趣味とどう付き合っていくのか、続けていくのか非常に悩んでいる。今日の記事はそんな話。

おおよそ4か月ぶりの観劇はPARCOプロデュース「トムとディックとハリー」。
宇宙sixの江田君・山本君・原君が主演の作品。
現在は活動休止中だが、演劇集団キャラメルボックスのサポーターをしているため、キャラメルボックスから原田樹里さん、筒井俊作さん、坂口理恵さんのお三方が参加されると知って、宇宙の舞台にキャラメルから3人も参加する、宇宙担ではないけれどもジャニオタ兼キャラメルボックスサポーターとして絶対に観劇しなくてはならないと、緊急事態宣言中にチケットの申し込みをした。残念ながら緊急事態宣言中に申し込んだ分は払い戻しの上再先行となり、泣く泣く東京楽のチケットは手放すことになったが…*1


7月に入り感染者数は日増しに増加し、いつどうなるかわからない状況だったため、当日までチケットの発券はしていなかった。
東京楽前日、自宅最寄り駅のコンビニでチケットを発券したところ、まさかのB列でサンシャイン劇場には両手では数えきれないくらいには足を運んでいるけれども、今まで一番いい席だなあと思いながら、池袋駅に向かった。
昨年キャラメルボックスが活動を休止してからは池袋に足を延ばす回数は少し減ったものの、サンシャイン劇場しかり芸術劇場しかり池袋は観劇趣味の上でわがホームともいえる街だったが、足を延ばすのはサンシャイン劇場おおきく振りかぶってを見に行った2月以来だった。また、休みの日に趣味のために外出するのは3月中旬以来だったので、思いのほか街に人が多いことに少し驚きもした。

従姉と合流して、サンシャイン劇場へ向かう。当日券や物販ブースはいつものサンシャイン劇場と同じ配置だが、物販ブースはアクリル板で遮られており、ロビーのソファーなども撤去されていた。
座席間隔は1席ごと千鳥格子のようにつぶしてある座席には公演グッズと赤いトートバックが掛けられていて、とりあえず発券したB列の座席に向かい、パンフレットを読んでいた。開演まであとわずかとなったときに、前列に誰もいないことに気が付いて、最前列A列はつぶしてあることに気が付いた。そして、それ以外の列の座席も赤いトートバックのかかっていない、本来観客が座れるはずの座席も空席が多いことにも。
数日前に新宿の劇場でクラスターが発生したばかりだから無理もない。希望者向けの払い戻しもアナウンスされていたので、私も一人での観劇であれば払い戻しを選択していたかもしれない*2
まだ大阪公演を控えている演目でもあるし、演目の細かいことは宇宙担が語ってくれるだろうから内容は差し控える。
ジャニオタのくせにジャニオタが何でもかんでもスタンディングオベーションする文化が好きではないのだけれど、この状況の中幕を上げる選択をしたスタッフ、そして、あまたのジャニーズタレントの中、真っ先に目の前に生身の観客のいるステージに戻ってきた宇宙の3人、それを支えたカンパニー全員に心からのスタンディングオベーションを送るくらいにお芝居は素晴らしかった。
ただ、実質最前列だからこそ演劇クラスターが発生しても無理のない状況も見えてしまった。
新宿の演劇クラスターの発生により、たいしてあてにならない抗体検査がガイドラインに含まれているほどやはり感染症の専門家ではない業界の作るガイドラインは十分ではないとわかっていたが、いくら入場前に体温を計測し、手指の消毒を行い、劇場の換気を行ったところで、それはあくまで発症している人間の観劇を排除することしかできない。このSARS-CoV2の何が厄介なウイルスかと言えば、感染した人間全員が全員発症するわけでもない上に発症2日前には感染力を持つというところだと思う。
世の中にはもっと致死率の高いウイルスが存在するが、その手のウイルスは感染するとあっという間に重症化して身動きが取れなくなるので他者に感染させることが難しい。
発症前に感染力を持つと言うことは健康そうな顔をして電車に乗ったり同じフロアで仕事をしている相手が、自分が誰かを感染させているかもしれないということだ。

最前列は潰してあったので演者の飛沫は掛かっていないと思うが、出演者が捲し立てるシーンでは目視できるほどの飛沫が飛んでいた。共演者はお互い飛沫を浴びあっていたと思う。この中に一人発症2日前の人間が一人いたら他の出演者に感染が広がっても無理はない。けれど発症していないから当日の体温測定くらいでは感染後発症前の状況など見抜くことなどできない。
新宿の演劇クラスターの発生は演者が密集する楽屋に出待ちなどガイドライン以前の問題があったことがわかっているが、ガイドラインを遵守していてもこのウイルスの厄介な特性『発症2日前には感染力を持つ』というところには打つ手がない。
おそらく最前列を潰してあったので観客まで飛沫は飛ばないという判断だったと思うのだが、この演目については前方席にフェイスシールドを支給するという対策は取られていなかったので、実質最前列で見て何を贅沢なことを言うのかと思われるだろうが、演者の飛沫を目視できてしまうような距離感のせいで、観劇中猛烈にフェイスシールドが欲しいと思った。観劇から2週間経って少なくとも今後発症することがあってもこの観劇のせいではないと言えることにようやく安堵もしている。

 

その翌日もまた別のお芝居を観に今度は渋谷のシアターコクーンに「ボーイズ・イン・ザ・バンド」を観るために足を運んだ。
制作会社や劇場により対策の基準に多少違いはあるようで、こちらは最前列は潰さない代わりなのか2列目くらいまでの前方席にはフェイスシールドを支給していた。
 



この日は真ん中くらいの列だったので、演者の飛沫の心配をしなくてよかったので前日よりは純粋に素直に演目に集中できた。
演者が抱き合うシーンなどもあったので、やっぱりこの中に感染後発症前の人間が一人いればクラスターが発生してもおかしくはないよなあと頭の片隅で少し思ったこともあったが、前日よりは感染症対策がしっかりしているように見えたこともあり、この演目についてはもう1度観劇する予定だったので観劇を終えた後、次回はあのシーンは〇〇さん双眼鏡で覗いておこう。とか、あんなこと言ってた気がするけどあれは××に向けたセリフじゃなく自虐だったのかなとか次回の観劇に向けた予習内容を考えていた。

 

7月27日 14時
元々午後休暇を申請していたものの、翌日もドリアイの配信で休暇を申請していていた多ジャンル掛け持ちオタクは肩身が狭くなることをちょっとだけ懸念して、14時過ぎに会社を出た。普段なら定時ダッシュを決めればコクーンの18:30開演に間に合うのだが、このご時世直前の体温チェックではじかれてしまえば元も子もないので午後休暇を申請していた。いつもならそのまま渋谷なり、途中にある原宿のジャニショなりで時間をつぶすのだが、繁華街でぶらぶらするもの少し怖いのでいったん帰宅して、身支度を整えてから再度都心に出ようと思っていた。会社を出てスマホを開くと同行する予定の方からラインが届いており、すぐに状況を察し、公式の発表を確認せねばとTwitterを開いた。

関係者の一人が発熱されたそうで、その関係者がどういう立場の方でどのくらい演者に関わっていたのかはわからないけど、仕方ないことだと思う。

 

演者じゃなくてもクラスターが発生すれば非難を受けるのは名が知れた役者たちであって、まして私は主演の安田顕さんのファンで、安田さんのお芝居が観たくてチケットを取ったわけだから、件の新宿の劇場クラスターのように主演の彼の名前が真っ先に上がる非難の記事など目にしたい訳じゃない。別にSARS-CoV2と共存したい訳じゃないけど共存するしかないこの状況ではいつだってどこにだって起こりうることで、それがたまたま真っ先に自分の推しの主演舞台で、自分がチケットを持っていた日に起こってしまったというだけのこと。中止になってしまったことを残念がることくらいは許してもらえると思って無念!とツイートして、普段はとっておきの日に飲むためにストックしているサッポロクラシックをやけ酒に使いこそはしたが、地方からの遠征になるとのことでこの状況で観劇をあきらめた知人もいるので、1回でも観れただけよかったと思おうとした。

 

不幸中の幸いにも27日に発熱の症状が見られた方は陰性だったと言うことで、おそらくそのほかの関係者にもその時点では症状らしきものはなかったようで夜には明日の公演再開が発表されていた。
ただ、PCR検査のキャパシティはもっと増やすべきだと思うが、腐っても生物学専攻、PCR検査で偽陰性偽陽性が生じることは知っているし、発症初期ではPCR検査でも陰性を示すことがあるも知っている。まして、このウイルスの何が厄介なところは発症2日前には感染力があると言うことなのだ。
楽しみにしていた演目のチケットが当日中止になってナーバスになっていたのだろうが、当日の抗原検査・PCR検査が陰性だったからハイ大丈夫です!とも感じられてしまった。
そして翌日の東京千秋楽を終えた後の、ツイートに『無事』という単語が含まれていたことに何とも言えない不快感が募った。
当事者の方や出演者含む関係者に感染が広がっていないことを祈った気持ちに嘘はなく、体調を崩したスタッフを責めるつもりもなければ謝ってほしいわけでもないのだ。ただ、当事者関係者の身を案じる気持ちとたった1回でも公演が中止になったことを残念に思う気持ちは並立して存在する感情で、私自身ひとまずクラスターは発生していないようで推しが矢面に立って非難される局面は回避したと言うことにほっとして、中止になったのが1回で済んでよかったとも思うけれども、ただ『無事』という言葉に、制作側と観劇するファン側の感覚の違いを感じてしまった。
制作側は公演を打つことが仕事で公演が打てなければ収益が上がらないわけだから、中止になっても1回で済んだことを無事と捉えるのかもしれないが、観劇する側とすれば趣味の1つでその趣味に対する優先順位や熱量は人によって異なるけれども、このウイルスによる異常事態の中では当たり前に趣味を楽しむことすら不要不急と詰られてしまう中でそれでも見に行きたいと思って都合をつけてエンターテイメントを楽しもうとしているのに、たった一言でその思いが踏みねじられたような気持ちになった。


8月末にある東京凱旋公演の追加公演が決まり、7月27日に当選していた人は優先受付に参加できるのだが、たった1回でも公演が中止になったことを無事と表現してしまうスタッフがいる演目をもう一度見たいとは思えなくなってしまった。
多ジャンル掛け持ちオタクなので、既に当選している舞台やコンサートのチケットはある。一緒に参加する約束をしているものばかりなので、チケットを無理に手放そうとまでは思ってはいない。
ただ、新しくチケットを取ることに対してはひどく躊躇している。


残念ながらまだまだSARS-CoV2と共存せざる得ない日々は続く。
いつになるかわからないけれどこのウイルスに打ち勝った後に、エンタメだってお気に入りの飲食店が無くなっていると言うことは避けたいと思っているし、配信がないよりあった方がいいけれど配信は会場で感じられるエンターテイメントの代替にはなりえないので、可能な限り支援していきたいと思っている。
そして、今回見に行った2つの演目はまだ地方公演が続くので、これから先1回も中止になることなく大千秋楽を迎え、さらに大千秋楽から2週間の間誰も体調を崩すことがないことを勿論心から願っている。

 
でも、個人的な感情として、突然中止になるリスクを覚悟してチケットを取っていても、その時その残念さを黙って昇華できるようにならないととてもじゃないけれど新しくチケットは取れない気がしている。
多ジャンル掛け持ちヲタクはエンタメを完全に断って生きられるわけもないので、配信系のチケットはガンガン買っちゃうんですけど。

2020年8月2日の偽らざる気持ち。

 

2020年8月5日 追記:書きなぐりに近い文章を読み直して改めて思ったのは、本当は演者の誰でもいいから演じられる機会が1回でも減ってしまったことを残念に思うと言ってほしかった。その言葉があれば演じられなかった役者も観劇できなかったファンも1つの公演が中止になったという不幸な出来事に対する感情を共有することができたのにと思う。感情の共有ができないどころか、公式の『無事』によって、あの日、公演を楽しみにしていた気持ちも、公演が中止になって残念に思う気持ちも無視されたように感じたからだと思う。あの日のワクワクもガッカリも『無事』という言葉で無視されたとしても消えるわけではない、誰にもわかってもらえない行き場のないマイナスの感情だけが私の心にしこりのように残ってしまったのだ。だからこんなにも後味が悪いのだと思っている。
制作側にとって感染者を出さずに公演を続けて少しでも収益を上げることが一番大切だと言うこともわかる。でも、観客がワクワクして劇場に向かっていることもたった1回でも公演が中止になったことを残念に思っていると言うことに考えが及ばない作り手の作る舞台を今までと同じように楽しめるかと言えば答えはNOだ。
もちろんすべての作り手が観客の感情に鈍感だと言い切るつもりもない。でも、舞台を楽しみにしていた気持ちまで無視されたように感じた感覚は当分消えそうにない。
そしてこの感覚は私からいろんな都合をつけて現場に足を運ぶという気力を奪った。
既にチケットを取ったイベントには足を運ぼうと思っているが、やはり今は新しくチケットを取ろうとは思えない。
配信はライブの代替にはなり得ない。その考えに変わりはないけれど今は家と職場の単調な往復の中で楽しめる配信だけで十分なのかもしれないとも思う。そして、いつか今まで通り気兼ねなく劇場やライブ会場に足を運べるようになったとき、元のフットワークの軽い現場が大好きなオタクに戻るのか、このまま在宅ヲタクになるのか、それは今はわからない。

*1:一緒に観劇に行く従姉と重複当選していたのが、従姉が当ててくれたチケットは最前列だった

*2:再販売は1人1枚の販売だったが従姉も同じ公演に当選していたので座席は離れたものの一緒に観劇した